<ECLIPSE>

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樹海



残念ながら、少し不幸せな方が人間は生きやすいのではないか。道すがらそんなことを考えていた。秋らしからぬやや日差しの強い日に、アスファルトで埋められた道をただ歩く。風の音を聞きながら見つめる足元に、私の見知った道は無かった。360°どこを見てみても、取り囲む空気は少し異質な様子であり、慣れ親しんだはずの小道さえ何も語りかけてはこない。光の熱を頬に感じ、昨日はがしてしまった左小指の爪はちょっと痛む。感覚はあるのだ。それなのに、まるで透明人間になったかのように通り過ぎていく風景。

下町への坂を下り、CDを買う。ここ数日、私は私のことが分からなくなっている。今まで経験したどんな痛みとも苦しさとも違う、論文を書くのが嫌なわけではないし、勉強するのがつらいわけでもないし、少し熱っぽい体を除けば健康状態は極めて良好。何かに追い詰められたときに感じるような、あの独特の苦さでないことは確かだ。それなのに・・・非常に形容しがたい思考停止状態。寝込んでみたり、本を読んでみたり、散歩してみたり、友人と話してみたり、散歩してみたり― 音楽を聴いたり、美味しいものを食べたりいろいろしてみたけれど、やはり戻らない。

人に聞いて欲しいわけでもないし、誰かに慰めて欲しいわけでもない。葛藤と呼べるほどの重責を担っているわけでもないし― けれど何かものすごく危険なものが、内に向かうものと外に向かうものが相克して綱を切ってしまいそうになっている。

言葉も、もはや助力にならなくなったようで。長いため息をつけば一緒に涙さえ出そうになる。意味のない涙、ただ人間の体から自然に湧き出る涙。長い間、私は息をしていなかったのだろうか?

坂道を上がる途中で制服の仕立て屋さんのショーウィンドウに高校の制服を見る。「あの頃は間違いなく幸せだった。」アンチ・ノスタルジーな心持でそう思う。すれ違う人たちは、何を考えているのだろうか。旅行のパンフレット片手にぶつかりそうになる人、自転車で子どもを迎えにいくお母さん、八百屋さんの前では世間話に花を咲かせる。

早くも日が落ちる夕暮れの淡い空気の中で、私はただ机に向かって座り、そんな光景を思い出している。


まるで樹海に迷い込んだような、永い、ながい空白―


















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☆
☆Author: 久美子
生まれ変わるなら、星か鳥になりたいと思う。
地上に「愛」が存在するならば、すべてを愛し、すべてに愛されたい。
命の灯をともして、日食の闇に、うごめく。



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