<ECLIPSE>

The Tower of Babel | main | タイトルなし
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たぶんもう迷っている時間はない。そのはずなのに私は、まだ来ぬ空白のために迷っている。生活というものにはいつでも改善の余地があって、多すぎる選択肢に眩暈してちょっと気持ち悪くなる。人間は「なりたいものになる」のだ。


気がついてみると頭の中はいつも空っぽで、何一つ覚えも忘れもしていないような気がする。ふと卓上に視線を投げてやっと私は私であることに気づく。たぶんこの薄紫のフレームのメガネは私用に調節されているだろうし、7年間も使っている腕時計は常に私のそばで時を刻んできただろう。中途半端に開かれた本はさっきまで私によって読まれていたのだろうし、ノートの雑多な走り書きはきっと私によるものだ。こういう意識のとき、私はモノによって保証されている。私のペン、私の睫毛、私の指、私の名前。

自己紹介をするときのちょっとした違和感―My name is Kumiko 自分で自分の名前を呼ぶとき私は思う。「私は本当にKumikoなのだろうか」。私という存在が疑わしいのだ。無造作に投げられたボールが描く放物線のように、私は弧を描いて日常へ沈んでいく。スローモーションで傾いていく世界に目を凝らしながら。中空にいながら、軌道は決まっているようなのだ。倒れる先には羽毛が雪のように敷き詰められ、周到に私を待ち受けている。深く、優しく、無数の純白の羽に抱き取られるようにして、その体は次第にすっかり覆われてしまい、もはや誰もそれを見つけることができない。かつて「私」であった匿名の体。

夢のようなそんなシーンに、もしかしたら私は天国を見たのかもしれないと思う。地上の墓碑に刻まれた人々の名前はきっとこの世で最後に唯一、残せるもの。匿名の体、とくめいのからだ―そんなものに憧れを抱きながらも、やはり私はまだ生きているのだから生きることを考えなければならないと思い直す。例えば幼いころ母に引かれた手。大切なひとを抱きしめた腕。この地上のあちこちを歩き回った足。私の体にはいろいろな染みや歪みができている。私のメガネは相変わらず私用に調節されているだろうし、万年筆の先は私に持ちいいように削れているだろう。


大量生産・大量消費の時代にあって、私は本当に選べる人間なのだろうか。選べないものはやはり、選べないのだろうか。もしかしたら全然違うことが出来たかも知れない過ぎ去っていく今を思いながら、私は私という人間の可能性について考える。人間は「なりたいものになる」のだ。
















































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☆Author: 久美子
生まれ変わるなら、星か鳥になりたいと思う。
地上に「愛」が存在するならば、すべてを愛し、すべてに愛されたい。
命の灯をともして、日食の闇に、うごめく。



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