<ECLIPSE>

花は、春の来るのを疑わない | main | 矛盾と隣り合わせの愛
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私には、十代に失った愛しいひとがいる。彼のことをとても好きで、高校のときはそれこそ毎晩深夜まで電話を掛け合った。明日学校で会えると知っていても、まるで時間を惜しむかのようにふたりで過ごした。別れ際の下手な私だから、もちろん彼のときもそうだったけど、大学に合格して、二十歳になって、お酒でも飲みながらなんでも話せる仲になると楽しみにしていたのに・・・彼は成人式の十日前、急病で亡くなった。寒い冬の日に、電話でそれを聞いたときこみ上げてきたものを、今でも忘れることができない。心と体の、奥底から突き上げるような嗚咽。

それからしばらく、世界の秩序が完全に崩壊した。日が昇ったり、沈んだり、それまで当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなった。昼と夜が、どうして今日も私に訪れるのか、毎日それを考えた。私だけ年をとって行くことが許せなかった。ひとはきっと、愛してくれる人を失くすより、愛する人を失う痛みのほうが強いのだ。そう悟った。しばらくして、私は彼を羨ましいと思うようになった。こんなことを言ったら、お母さんに怒られてしまうだろう。けれど、とてもきれいなままでひとり行ってしまった彼を、ずるいとさえ思ったのだ。

私は以前から、人間の当然の営みとして育まれる日々の生活が、果たして自分に続けていけるのかどうか、疑問に思っていた。皆(この言葉は怪しいけど)がしていることを、私はできない。一体いくつまで私は生きるんだろう、50年でも長すぎると。神様が死んだ日、同じことを思った。いつになったら、彼に会えるんだろう?けれど、自分が決して自殺などできないことはわかっている。死んではいけない、お前に自らを殺す権利はないと、あらゆる価値観を崩してみても、その声は反響し続ける。それは誰の声だろう?

どうやって生きていけばいいか分からなくなる夜は、彼のことが心に浮かぶ。今でも、本当にいないんだろうかと思ったりする。彼が教えてくれた"Tears in Heaven"は今でも弾けるし、ハードカバーの赤と緑の『ノルウェイの森』も本棚にあるのに。私は致命的な欠落を抱えて、どちらにも行けずうずくまっている。だけど、生きるしかない。しかも、できるだけ幸せに。ひとりで立って、孤独を友に、卑屈になることなく、生き抜く。これができたら、私は私の幸せを花束にして、彼に届けよう。そして、しわくちゃのおばあちゃんになって、招待状が来たら、おいしい日本酒でも持って、彼を訪ねよう。

毎朝ポストを見てみても、まだその手紙が届く気配はない。それはきっと、今日も一日生き抜けという、彼からのメッセージなんだ。
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| 未分類 | 04:10 | トラックバック:0コメント:2
コメント
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2005.07.27 Wed 19:22 | |
コメント、ありがとうございます。
はい・・・二人分の人生を、あるはずだった彼の幸せを生き、彼の笑顔を笑い、生き抜いていきたいと思います。

暖かいお心、胸に染みました。
私もお幸せを祈ります。
そして、幸せになります。
2005.07.28 Thu 00:48 | URL | ☆
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☆Author: 久美子
生まれ変わるなら、星か鳥になりたいと思う。
地上に「愛」が存在するならば、すべてを愛し、すべてに愛されたい。
命の灯をともして、日食の闇に、うごめく。



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